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【講演】(神戸大学)「組織の安全配慮義務と事業継続計画(BCP)~大川小学校津波訴訟判決の教訓と防災を自分ごとにする人づくり~」

第236回神戸大学RCUSSオープンゼミナール
日時:2018年8月18日
場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)
司会:神戸大学都市安全研究センター 教授 北後明彦
主催:神戸大学 都市安全研究センター (Kobe Univ. Research Center for Urban Safety and Security)
共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
後援:兵庫県
(講演1)
・岡本正 銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・博士(法学)「組織の安全配慮義務と事業継続計画(BCP)~大川小学校津波訴訟判決の教訓と防災を自分ごとにする人づくり~」

東日本大震災で多数の犠牲者を出した石巻市立大川小学校に関する津波訴訟の控訴審判決が今年4月にありました。大川小のほか十数件におよぶ津波訴訟の裁判経過や判決を分析した研究成果をもとに、企業や行政機関が災害時に果たすべき「安全配慮義務」や会社役員の「善管注意義務」とは何かについて、危機管理と防災・減災の視点から教訓を抽出します。具体的に組織の事業継続計画(BCP)や危機管理マニュアルに教訓をどう反映すべきか、組織で採用すべき人材育成や教育研修のプログラムとは何か、について、講師が創設した『災害復興法学』の観点を踏まえつつ解説します。

(講演2)
・山崎栄一 関西大学社会安全学部教授「これからの消防法学の展望」

発表者は、2018年6月より月刊消防(東京法令出版)にて「消防法学入門」を連載している。この連載をきっかけに、消防法の世界における二つの大きな特徴と問いが見えてきた。それは、消防法制をコンスタントに研究している行政法学者が皆無であり、消防実務家によって消防法学が発達を遂げているという点である。そのこともあって、消防法の解釈論が数十年前の行政法のテキストに基づいて展開されている。語弊を恐れずにいえば「消防法学のガラパゴス化」ともいえる現象が起こっている。このような状況をどのように評価すべきなのであろうか。新たな消防法学の可能性はないのであろうか。他方、消防業務の多くの部分は、消防法令を常に意識しながら活動をすることが求められており、実務的な視点に基づいた消防法テキスト・実務テキストが多く普及している。そして、これらのテキストに基づいて、消防に関する法務が実施されているのである。同じく語弊を恐れずにいえば「消防法学における実務と学問の遊離」ともいえる現象が起こっている。消防法学における実務と学問の融合はあり得るのであろうか。このような中で、消防職員に対して、どのような法教育を展開すればいいのであろうか。そもそも論として、学問的な視点から法学や行政法学を教える意味が一体どこにあるのであろうか。今回の発表において、今後の消防法学のあり方について、あくまでも試論(かつ私論)ではあるが、発表者の見解を述べる予定である。