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【コラム】千葉市議会総務委員会に参考人招致されました

2013年3月7日、千葉市議会総務委員会に「参考人」として招致されました。

 

「特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部改正」の審議のためです。この法案は、教育委員会の委員など、特別職の役職の給与の一部を月額制から日額制に変更するというものです。実際に会議や視察などで職務に従事した場合にのみ給与が支払われるようにする条例です。財政規律などを背景とした地方行政改革の一環と言えるでしょう。

 

千葉市の熊谷市長のブログが参考になります

http://kumagai-chiba.seesaa.net/article/303590860.html

 

地方自治法203条の2第2項は、行政委員の給与は、原則「日額制」としつつ、条例で例外、つまり「月額制」にすることを認めています。千葉市では、もともと「月額制」条例があったので、これを「日額制」にするという条例が審議されています。

 

関連する最高裁判所判決(平成23年12月15日)があります。

まず、一審と二審は、ある自治体の「月額制」が、日額制でないことが「違法」と判断していました。最高裁はこれを覆して、(ざっくり言えば)「議会裁量なので違法ではない」としたのです。私は、参考人として、この最高裁判例の解釈と、本件千葉市の条例案との関係性を述べる役割となりました。

(参考)最高裁判決 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111215143236.pdf

 

 

千葉市では、「千葉市特別職報酬等審議会」が一部の行政委員の日額制を支持する答申を出していました。もっとも、委員の判断が拮抗するなど大論争になっており、議会でも慎重かつ十分な審議が必要との判断をしました。それがこの度の「参考人招致」になったというわけです。

 

 

議会事務局の方によれば、同議会が「参考人」を正式に招致することは、前代未聞といってよいほど珍しいことだということで、大変貴重な機会をいただいたことに感謝です。

 

 

以下、関連するやり取りを千葉市議会の議事録から抜粋させていただきます。コラムへの記載を省略した部分の議事録も併せて振り返ると、参考人発言をきっかけに議論が整理され、議会の議論も非常に活発になった様子がうかがえました。微力ながら貢献できて何よりです。

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◯委員長 

議案24年第135号・特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部改正についてを議題といたします。

1月21日及び2月14日の委員会におきまして、千葉市特別職報酬等審議会委員及び学識経験者を参考人として招致することを決定し、議長から出席要請をしたところでございます。

学識経験者につきましては、学識経験者に求める意見に回答できる方を正副委員長において検討し、このたび、岡本正弁護士に応じていただけましたので、御紹介を申し上げます。

岡本弁護士は、第一東京弁護士会に所属し、東京都千代田区神田小川町の田邊・市野澤法律事務所に所属されております。慶應義塾大学法科大学院や福島大学大学院において講師を務められ、平成21年には、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、平成23年から災害復興まちづくり支援機構事務局員、また、現政権での原子力損害賠償紛争解決センター総括主任調査員を務められ、行政機関にかかわりの深い弁護士でいらっしゃいます。

岡本弁護士におかれましては、大変御多忙にもかかわらず、当委員会の参考人として御出席をいただき、心から御礼を申し上げます。(以下略)

 

◯委員長 

それでは、私のほうから質問文を読まさせていただきますので、その後、意見の陳述をお願いしたいとお願いしたいと思います。

まず、初めに、最高裁判決を踏まえた報酬のあり方についてですが、滋賀県行政委員月額報酬住民訴訟の最高裁判決を踏まえ、本市の各行政委員会に月額報酬制を採用する条例は、職務の性質、内容、職責や勤務の態様、負担等の諸般の事情を総合的に考慮して、日額制、月額制のどちらでも妥当と判断できるかとの質問について、御意見を伺いたいと思います。

着席したままで結構ですので、御発言お願いいたします。

 

◯参考人 

弁護士の岡本正と申します。よろしくお願いいたします。

では、ただいまの御質問にお答えをさせていただきます。

御指摘の最高裁判所の判決、すなわち平成23年12月15日の第一小法廷判決でございます。

行政委員に月額報酬を支給することとした条例の効力が問題、争点となったものでございますが、これは、地方自治法第203条の2第2項ただし書きによる条例の効力が問われたものであることは、皆様、先生方、御承知のとおりかと思われます。

この最高裁判所の判決でございますが、日額以外の行政委員の報酬を定める条例については、広く議会の裁量に委ねられているという旨、結論づけております。

その裁量につきましては、逸脱や濫用があるかどうかについて判断するとしておりまして、御質問にもありますように、職務の性質、内容、職責、そして勤務の態様、負担等の諸般の事情を考慮すべきと結論づけております。

このような観点から、御質問にお答えさせていただきますれば、そもそも条例におきまして月額報酬という報酬形態を定めること、あるいは日額報酬という形態を定めること。これは、いずれを採用したとしても、まず一義的には議会の裁量ということになると考えております。そのように最高裁判決を読むことができます。千葉市における行政委員の報酬形態につきましても、これは同様に当てはまるものと考えております。

さらに、細かい要件に関する御質問もございますが、まず、行政委員の報酬をどうされるかという点につきましては、まさに職務権限などといった定性的な要因や実際の職務といった定量的な要因、双方を踏まえつつ、やはり繰り返しになりますけれども、議会の裁量で判断をされるべきことであるということになりますので、御質問については以上のとおり回答させていただきたいたいと存じます。

 

◯委員長 

ありがとうございました。

次に、2問目の質問を読まさせていただきます。

審議会と議会の結論が異なる場合の対応についてですが、審議会の結論は尊重すべきものであるが、結論に至る過程において意見が拮抗していた場合は、議会において審議会と異なる結論を下したとしても妥当と言えるかという質問について、御意見を伺いたいと思います。

 

◯参考人 はい、お答えさせていただきます。

まず、前提としまして、この千葉市特別職報酬等審議会でございますが、これは千葉市特別職報酬等審議会設置条例に基づいて設置された、条例に基づく市長の諮問機関とされております。

このような当該諮問機関の答申でございますが、これがまず議会の議決、これを法的に拘束するということはないということは申し上げられると考えております。

 

続きまして、この報酬の審議会でございますけれども、学識経験者の方々や、千葉市内の公共的団体等を代表する者らで構成ということでございますが、やはり一定の専門性が認められるということはあるとは思われますけれども、やはり先ほどの1問目との重複になりますけれども、最高裁判例に照らしますと、一義的には議会のほうで裁量をもって判断されるべきことであるということでございまして、繰り返しますけれども、答申自体が法的な拘束力を持つということはないということになります。

地方自治法第203条の2でございますけれども、ただし書きの条例は、あくまで住民の代表でいらっしゃいます議会の判断に、条例制定権のある議会の判断に報酬のあり方を委ねたものと解されますので、その点から考えますと、御質問にあります、意見が拮抗しているかどうかということ、これ一事をもって判断できるものではないということにはなってしまいますけれども、その審議会の答申の内容を踏まえ、さらにそれを議会のほうでどう判断されるのかというところが、まさにこれは条例の制定権のある議会に委ねられているということでございますので、繰り返しになりますけれども、最初の質問と同様に議会の裁量ということでお話をさせていただきたいと思っています。

以上であります。

 

 

このような2つの質問に対する回答により私の参考人としての役目は終わりました。

 

また、私が退席したのちも総務委員会の全議員から参考人発言に基づいた議論が交わされ、次のような参考人への言及もありました。

 

◯委員

(前略)

なお、案件を継続審査して参考人の意見も文書で寄せていただき、また、岡本弁護士には出席いただきました。市長が昨年の第4回定例会で提出し、不十分な説明に対して、総務委員会がその権能を生かして慎重審査し、行政委員会の役割や報酬のあり方について掘り下げたことは、まことに意義深いものであったことを述べておきたいと思います。

 

 

地方の議会が「参考人」を正式に招致することはほとんどない、ということですから、議員の方々にとっても意義深いものであったということかと思われ、貢献できたことをうれしく思います。

 

 

なお、「議案24年第135号・特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部改正」はその後可決されました。