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【コラム】陸前高田・大船渡へ:立教SFR『地域復興の法と経済学』~災害復興法学、その先へ

 「2015年度立教大学学術推進特別重点資金(立教SFR)東日本大震災・復興支援関連研究」が始動しました。プロジェクトは『地域復興の法と経済学:法律相談・意識調査の分析による法・政策課題の抽出と経済分析』です。

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陸前高田市

 この研究は、法律相談データの分析、行政機関・被災個人への調査により被災地域の法的課題を抽出し、その解決策を法制度・公共政策の観点から明らかにするとともに、これを現実の法改正提言や制度運用改善提言に繋げることを目指すものです。3年計画で進めて行きます。

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陸前高田市

 

 拙著『災害復興法学』(慶應義塾大学出版会)でもご紹介している、東日本大震災の4万件を超える無料法律相談のリーガル・データベースが出発点になっています。これらに経済学的な視点や手法を用いた分析を加えることで、新たな法制度の課題や解決策が発見できるのではないかという問題意識を常々持っておりました。立教大学の田島夏与先生、徳島大学の小山治先生らとチームを結成することで、ついに研究事業として動き出しました。

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  大船渡市

 

 東日本大震災の復興現場への第一弾ヒアリングとして、陸前高田のいわて三陸ひまわり基金法律事務所所長の在間文康弁護士、大船渡市の角田陽介副市長、同災害復興局土地利用課長らを訪問させていただきました。

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いわて三陸ひまわり基金法律事務所 

 在間弁護士からは、震災1年経過して今に至るまで、被災地のすべての仮設住宅を毎年巡回して相談活動を実施されている実績から、相談傾向の変化、法制度上の課題、教訓として残すべき問題、などを伺いました。被災者の生のリーガル・ニーズに迫る大変貴重なヒアリング結果となりました。在間先生自身も分析結果を発表されるそうですので、期待したいと思います。

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 大船渡市役所副市長室

 大船渡市の角田陽介副市長には、過去に「災害復興まちづくり支援機構」でもご講演いただくなど法律家へもメッセージをたくさんいただいております。行政の方が土地区画整理や防災集団移転促進事業をどのような方針と手法で進めてきたのか、非常に丁寧にご説明をいただきました。大船渡はその元々の地理上の特徴から自然と独自のスタイルが生まれたように思います。津波の到達した集落とそうでない集落とが混在している地域で、今までの集落とコミュニティを維持しつつ、どのようなまちづくりを行うか、その課題や実績を伺うことができました。

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  陸前高田市

 

 今回伺った陸前高田市の住民のリーガル・ニーズや、大船渡市によるまちづくり手法は、いずれも本研究で今後実施する無料法律相談の分析結果の解釈指針になりうるものです。お忙しいなかお時間を割いて下さった関係者の皆様に、心より感謝を申し上げます。

災害復興法学書影