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【コラム】1.17「首都直下地震対策シンポジウム 阪神・淡路大震災から20年、首都直下地震に備えて」にパネリストで登壇しました。

2015-01-17 12.51.10

 

今から20年前、阪神・淡路大震災が起きた。

 

死者 6434名、行方不明者3名、災害関連死919名、約25万棟(46万世帯)が全半壊、被害総額10兆円。

 

私は当時高校生。いつもの朝の情報番組が始まる時間にテレビをつけると真っ暗な中で火災の映像。テロップによれば神戸市街という情報。西宮市には叔父家族が当時まだ小さい3人の子供たちと住んでいた。母親の青い顔を覚えている。結局ある程度の時間のうちに連絡がとれたようだが、当時の自宅(社宅)は住めない状態になったということだった。

 

私の阪神・淡路大震災に関する記憶といえばこの程度だった。今考えれば恥ずかしいが、教訓を活かそうとか、自分もボランティアに行ってみようなどという発想は皆無だった。

 

それから16年。2011年3月。弁護士になって8年。東日本大震災が起きた。自分にできることがないか必死で探し、阪神・淡路大震災当時に活動し、その後も復興支援活動や防災啓発活動を絶やすことなく行っていた兵庫の弁護士たちに師事して走りながら多くを学んだ。そして誓ったのが、この教訓やノウハウを必ず次の世代に継承するということ。その役目を自分も担うべきであるということ。

 

気象庁の方からのお声掛けで「首都直下地震対策シンポジウム」(気象庁・日本赤十字社・東京管区気象台共催/内閣府・消防庁・東京都・港区後援)に登壇することになった。当初は生活再建支援や復興政策のフェーズにおいて中心となる弁護士などの活動は、「地震対策」の議論には直ちに馴染まないという考えもあったようである。

 

 

ところが、事前対策、応急対応、避難生活、復興支援、これらは、PCDAサイクルのように連続している。災害直後の救助救護や情報伝達で終わらず、その先の復興や政策を念頭に置いた、そのための知識を事前に入れておくという「防災」もあるのだ。

 

 

今回の登壇者も、事前対策、億級対応、避難生活、復興支援の各フェーズでのスペシャリストが集まる形になった。官・民・理系・文系入り乱れた、今までにない構成ではないだろうか。

 

 

岡本正からは、「生活再建や復興情報の伝達のための情報提供ルート複線化」「災害時要援護者支援のための個人情報の共有・利活用」を中心に話をさせてもらった。いずれも中央大学大学院や慶應義塾大学で講義している「災害復興法学」「災害復興と法」で必ず述べることだ。

いのちが助かった後、これから一歩を踏み出すために。絶望を希望に変える情報がある。今後はこれらを学ぶことが必要だ。東日本大震災4万件の法律相談の結果は決して1つも無駄にできない。

 

「弁護士からは、災害発生後に受けられる公的な支援制度を事前に把握しておくことも重要だとの意見が出された」(2015.01.17  時事通信)

「災害復興に詳しい岡本正弁護士は「被災したら、まず市区町村に罹災(りさい)証明書を申請する必要がある。避難生活では生活費などお金の心配で眠れなくなるが、手続きを知っておくだけで違う」と語った」(2015.01.17 日テレNNNレニュース)

 

 

基調講演は横田崇・東京管区気象台長。過去の気象庁の取組と、今後警戒すべきM7クラスの地震対策を中心に解説。そして、そのさらに先にM8を超えるクラスの地震が控えている現実も。30年以内の首都直下M7クラスの地震発生確率は7割。もはや対策の先送りはできない。

 

パネルディスカッションでは、各パネリストが専門分野から様々な提言や教訓を伝えた。

 

 

廣井悠・名古屋大学准教授は、「火災」に着目し、首都直下における火災被害は関東大震災を上回ると指摘した。一見して燃えにくい街並みが形成されていても、都市が発展すればするほど、火災発祥リスクは上昇するという歴史的事実からの解説は説得的だ。また、「帰宅困難者」にも言及。東日本大震災の東京をはるかにしのぐ想像を絶する数の帰宅困難者が路上にあふれるという指摘。これに対応するには、同時多発のリスクを念頭におき、情報入手手段の重畳化と、避難場所や一時滞在場所を把握することが必須だという。

 

 

白土直樹・日本赤十字社災害対策企画室参事は、過去の災害における医療救護支援の現場経験から、東京における負傷者と医療リソースの格差を指摘。自助共助の重要性を訴えた。日本赤十字社の提供する防災教育プログラムは、自助共助の力を養い、地域のリーダーを育成することを目的としている。地域にコミットしてコミュニケーションを円滑に実施することこそが首都直下地震対策のカギだと述べた。

 

 

小林千佳子・東京都総務局総合防災部情報統括担当課長は、東京都の取り組みを網羅的に紹介。なかでもやはり自助共助の力の育成に力を入れたいというメッセージ。また、その支えになる罹災証明発行システムの導入も推進しているなど前向きな取り組みが紹介された。

 

 

コーディネーターの鈴江奈々アナウンサーは防災士でもある。今回のパネリストたちの議論が参加者にどうしたら最もわかりやすく伝わるか、心に響くか、ということについて多くの指導をいただいた。みごとなコーディネートに感服した次第。

 

 

今回は発言時間はそれほどおおくはありませんでしたが、

岡本正の伝えたかったことは

「災害復興法学」「自治体の個人情報保護と共有の実務」

にも詳しく記されています。

【追記】

当日の基調講演やパネリストの資料が気象庁のウェブサイトに公開されました。防災研修などの企画立案にぜひ資料をご活用ください。

>シンポジウムページ(気象庁)

>岡本資料 

 

【TVニュース】(日テレニュース24)「震災を教訓に… 東京で防災シンポジウム」

【メディア記事】(時事通信)「『避難場所、普段から確認を』=倒壊、火災など同時多発―首都直下地震対策でシンポ」