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【生活を取り戻すための再建情報整理】熊本県熊本地方を震源とする地震を受けて(備忘メモ・速報暫定版)

 

 【生活を取り戻すための再建情報整理】熊本県熊本地方を震源とする地震を受けて(備忘メモ・速報暫定版)弁護士・マンション管理士・中央大学大学院公共政策研究科客員教授・慶應義塾大学法科大学院非常勤講師 岡本正

 

熊本地震により亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 

今の時点で私の経験からお届けできる支援は、人命救助後のフェーズにおいて、生活救助・生活再建のために必要になると思われる各種制度の知識のごく一部です。あくまで過去の大きな災害の支援実績のなかで予想を交えてまとめたものです。生活を取り戻す制度に関する情報は、内閣府防災や自治体のページにも、相当の情報が記述されております。今後も次々情報が現れてくるでしょう。ところが、情報量が多く、それぞれの方の事業再建や生活再建ニーズに合致する制度を選択することはなかなか難しいというのが実感です。そこで、特に、家族、従業員、事業主らにとって重要な「生活再建のための知識」を紹介させていただきます。支援に行かれる方にも是非ご認識いただきたい知識です。

知識の多くは、市町村が窓口となっているものが多いと思います。ところが、人命救助、応急対応が最優先のため、市町村によっては、まだ制度や支援の受付が開始できない場合があります。その場合は、無理に窓口に問い合わせたりすることは避け、窓口が開始されるのを見逃さないように待つという姿勢も求められると考えています。

 

■熊本弁護士会「震災ADR」

ADRとは、判決等の裁判によらない紛争解決方法をいいます。弁護士会のADRは、弁護士が、中立の立場で「和解のあっせん人」となって、当事者の言い分をよく聞いて、ときには、双方に、有益と思われる「あっせん案」を提示するなどして、当事者間での自主的な解決、すなわち、和解による解決を援助、促進する手続です。

このように、弁護士会ADRは、話し合いによる円満な解決を目指す手続です。
法的紛争に関して、当事者間で話し合いの余地があって、双方が、弁護士という法律の専門家から事情に応じた法的助言を得ることで、互いに歩み寄る可能性があるような事案に有効であるといえます。

 

■熊本県弁護士会ニュース

熊本県弁護士会が被災者・被災企業の再建情報をまとめたニュース(表裏1枚のコンパクトなもの)です。過去の災害支援経験をもとに、災害時の被災された方のニーズをまとめています。法律や情報は発行時点のものであり、今後変わる可能性がありますので留意ください。「まずはどうしたらいいのか?」「当面の生活費は?」「どこに行けばいいのか?」「ローンや料金の支払いは?」。そのような問いに対して、完璧ではありませんが、少しでもお答えし、希望をもっていただけたらと願い作成されたものです。行政・民間問わず、被災された方や組織、支援に入る行政・企業の方、遠方から思いを寄せる方、是非ご一読いただければと思います。もし印刷・配布くださる場合は、カラー印刷をお願いできればと思います

くま弁ニュース4号(熊本県弁護士会ニュース 第4弾 2016年9月20日版)

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くま弁ニュース3号(熊本県弁護士会ニュース 第3弾 2016年7月1日版)

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くま弁ニュース第2号(熊本県弁護士会ニュース 第2弾 2016年5月17日版)

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➡熊本県弁護士会ニュース<災害Q&A>(第1弾・2016年4月21日版)

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■熊本市地震被災者支援制度(熊本市作成)

熊本市が発行した被災者支援制度一覧(第1版)(2016年4月28日時点の支援制度)です。熊本市のものですが、他の市町村でも制度を知るうえで参考になるまとめ冊子だと考えます。

概要版(第1版)(PDF) ➡本編(第1版)(PDF)

 

■熊本地震被災者応援ブック

政府が生活再建や避難生活、健康上の注意などをまとめた冊子です。私見ですが、たいへんよくまとまっています。過去のニーズや支援の実績が満遍なく配置され、読みやすい内容です。「弁護士会ニュース」とあわせて、支援者のかた、企業人事や危機管理担当は必携必読です。

熊本地震被災者応援ブック(本文PDF)

首相官邸のページ

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■罹災証明書

罹災証明書(り災証明書)は、自治体が発行し、住家被害などを証明するものです。各種被災者支援策の適用の判断材料として幅広く活用されている、生活再建の原点ともいうべき証明書です。自治体も初期は人命救助や避難所運営など最優先事項があります。また被害確認にも時間がかかります。直ぐには発行されません。しかし、いまのうちに証明書の存在は知っておき、窓口開始の情報を漏らさないようにしていただければと思います。

➡罹災証明書の発行が随時始まっています。市町村のページをチェックしてください。

 

■被災者生活再建支援金

ごくごく簡単にいえば、大規模災害が起きた場合で、自宅が全壊するなど大きな被害を受けた場合に、その世帯に対して支払われるお金です。基礎支援金が最大100万円となっており、自宅を失った場合の生活再建の第一歩というべき支援金です。ただし、適用には一定の要件をクリアしなければなりません。また、適用されるとしても、現在の法律では、半壊・一部損壊住宅には支援金は給付されません。純粋な事業所にもこの支援金は給付されません。被害状況に応じて、被災者生活再建支援金以外の、別途の支援が必要になる可能性が高いと思われます。

➡熊本県全域への被災者生活再建支援法適用が決定しています。

被災者生活再建支援制度概要(PDF)

 

■ローンや各種契約・支払について(銀行、証券、保険)

銀行、証券、保険各社が被災者・被災企業に対して講じるべき措置が九州財務局から出ています。『支払猶予』『自然災害債務整理ガイドライン』などにも言及されており、被災者・事業者にとって、きわめて重要な情報が示されています。ぜひ知っておいていただきたい知識です。たとえば、『(1)預金証書、通帳を紛失した場合でも、災害被災者の被災状況等を踏まえた確認方法をもって預金者であることを確認して払戻しに応ずること。』『(2)届出の印鑑のない場合には、拇印にて応ずること。』『(8)災害の状況、応急資金の需要等を勘案して、(中略)返済猶予等の貸付条件の変更等、災害の影響を受けている顧客の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずること。』『(9)「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続き、利用による効果等の説明を含め、同ガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずること。』などの記述があります。

http://kyusyu.mof.go.jp/rizai/pagekyusyuhp016000094.html

 

■被災ローン減免制度=自然災害債務整理ガイドライン(ローンが支払えない場合、被災者生活再建支援金・災害弔慰金ほか義援金など一定の財産・現金を残してローンを減免できます。拙速な支払やリスケジュール合意をしないこと)

「被災ローン減免制度」=「自然災害債務整理ガイドライン」こそが、被災地経済の復活と復興の起爆剤であると考えています。返済ができなくなった住宅ローンほか債務を抱えている方は、「自然災害債務整理ガイドライン」が使えるかを検討しましょう。義援金や公的支援金などを全部手元に残し、さらに一定の財産も手元に残しながら、債務の減免をすることができる制度です。詳しくは、専門家がサポートすることになりますのでご安心ください。今後、様々な支援金が支給されますが、それらは将来の再建のために利用し、ローン返済には使わないように注意してください。拙速なリスケジュールをすることがないよう、よく検討してください。住宅ローンなどを抱えている方は、まずは「自然災害債務整理ガイドライン」の利用ができないかをチェックすることを忘れないようにお願いします。なお、金融機関側には、ガイドラインの積極的な説明と周知が求められています。

全国銀行協会「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

ガイドライン解説チラシ・フローチャート(PDF)

熊本県以外でもガイドラインが適用される余地が出てきました。全銀協の申し合わせ事項として、「平成28 年(2016 年)熊本地震」に関しては、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が適用されており、当ガイドラインの周知、徹底を行うこと。また、お客さまから災害に伴う債務のご相談があった場合には、「災害救助法適用市町村」との関係にかかわらず、当ガイドラインの趣旨を踏まえ、お客さまの事情に応じた丁寧な対応をすること。」と明記されました。

 

■奨学金の支払猶予等(日本学生支援機構)

独立行政法人日本学生支援機構は支払猶予措置や特別の支援を実施していますので、該当する方はお問い合わせください。

 

■地震により休業している事業主・労働者の皆様:休業や一時離職する場合の給付金があります。事業・雇用の維持にもつながります。

●雇用保険失業給付の特例措置

熊本県内の事業所で勤務していた方が、災害により休業した場合や一時的に離職した場合(雇用予約がある場合も含みます)は、雇用保険の失業手当を受給できる特例措置があります。

地震の被害による災害救助法の適用に係る緊急雇用対策について(PDF)
 平成28年熊本地震に伴う雇用保険失業給付の特例措置について(PDF)

雇用調整助成の特例措置

地震に伴う「経済上の理由」により休業を余儀なくされた事業所の事業主が、労働者に休業手当を支払った場合、雇用調整助成金を利用できます(熊本地震の影響による休業であれば熊本県以外の事業所でも利用できます)。

地震により休業している事業主・労働者の皆様へ~休業や一時離職する場合の給付金のお知らせ~(PDF)

●厚生労働省熊本労働局による各種リーフレットのページ(PDF)

 

■熊本地震で被災した住宅の応急修理(災害救助法)

災害救助法に基づく住宅の応急修理の実施要領がまとまりました。熊本県のホームページをご覧下さい。

熊本地震で被災した住宅の応急修理について

 

■生活福祉資金(緊急小口資金)特例貸付(熊本県社会福祉協議会)

被災された方で 被災された方で 県内 に住所を有し、当座の生活費必要とする世帯への貸付です。一世帯につき1回限り10万円 以内、又は条件に該当すれば一世帯につき1回限り20万円以内の貸付が受けられます。

➡チラシ

 

■特定非常災害の指定(特に「相続放棄の熟慮期間の延長」2016年12月28日まで)

史上4度目の特定非常災害指定がありました。様々な法定の期限が延長されることで、被災者の権利保護を図ることができるようになります。今回は大きく4種類の措置が指定されましたが、影響する具体的な措置は各省庁によって定められ、200種類以上となる見込みです。なかでも「相続放棄の熟慮期間の延長」は東日本大震災を契機に新設され、今回初適用となりました。借金が多い場合に相続を放棄する手続きが民法で定められていますが、通常は、相続を知ってから3か月が期限です。これを一律で2016年12月28日まで延長する措置が取られます。この間に相続放棄の是非を調査し、延長申請などもしておくことになると思われます。専門家への相談をおすすめします。

「平成28年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について

 

■内閣府(防災担当)被災者支援に関する各種制度の概要

上記で紹介した重要な支援制度を含み、被災者生活再建に関する制度が網羅的に記述されている資料です。より詳しい法制度情報が必要な場合にはこちらで情報収集をお願いします。

http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf

 

■損害保険(支払猶予、契約照会等

損害保険業界の情報は「損害保険協会」に集約されています。トップページに災害対応の一覧があり、最大6か月の保険料払い込みの支払猶予措置なども示されています。契約のある方は必ずチェックしていただきたいと思います。契約会社が不明の場合でも損害保険協会「自然災害損保契約照会センター」に問い合わせができます。熊本地震では、通常よりも簡易な申請で保険金が出るような特別対応が取られています。詳細は、契約している保険会社へお問い合わせ下さい。

損害保険協会熊本地震特設ページ

 

■生命保険(支払猶予、契約照会等)

生命保険会社では、保険料の払い込みを最長6ヵ月猶予(延長)する対応をしています。保険金についても、必要書類を一部省略する等により簡易迅速な支払がなされる場合があります。本件証券紛失・滅失などで契約した会社がわからない場合には、生命保険協会「災害地域生保契約照会センター」に問い合わせができます。

生命保険協会のページ

 

■携帯電話・固定電話会社のページ

初期は安否確認や伝言のためにページが特設されます。その後、携帯料金の支払に関係する情報(基本料金・通信通話料金の無料化や減免措置など)が入ってきます。情報収集に役立ててください。

総務省が各電話会社のページをまとめています。

 

■災害救助法の徹底活用・避難所の質向上

災害救助法では「災害救助の運用と実務」(赤くて分厚い本)にも言及があるように、一般的な最低限の救助基準(いわゆる一般基準)だけではなく、内閣府と県が協議することで様々な追加・上乗せ支援をすることができます。民間宿泊施設を避難所指定した際の費用の上乗せしたり、1日の食費など支援額を増加したり、障害者対応や介護対応をしたり、やれることはたくさんあると考えられます。また、東日本ではなかった補助メニューもできています(避難所の間仕切り、トイレ、更衣スペース)。自治体関係者には救助法の徹底活用が求められます。

東日本大震災における災害救助法の弾力的運用の実例(ごく一例です)

 

安否確認や福祉支援のための要援護者名簿の共有

災害後に特に災害時要援護者(災害時要配慮者)への安否確認、支援の要否の確認などは急務です。2013年災害対策基本法の改正により、自治体には「避難行動要支援者名簿」作成が義務付けられました。この名簿をいまこそ活用するときです。法令上、災害時には、名簿情報を各種支援機関に提供することができるようになっています。個人情報保護条例の第三者提供の法律上の例外ですので、本人同意は不要です。名簿を防災部局だけでもっているのではなく、しかるべき自治体の福祉部局、外部の協力支援機関や自治会、自主防災組織らと、個人情報を適切な範囲で共有し、災害時要援護者へのアクセスを実現していただきたいと思います。

「個人情報の共有で地域をつなぐ 改正災害対策基本法の全面施行と活用術」(岡本正・シノドス記事)

 

■行政機関の災害情報・支援情報ポータルサイト

行政機関は、新しく始まる支援情報や災害情報をこまめに発信しています。新しい「お知らせ」から最新の情報を得ていただければと思います。

内閣府(防災担当)「熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」

国の各省庁・熊本県・各市町村のリンクはこちらに別途まとめております。

 

以上は、東日本大震災、伊豆大島土砂災害、広島豪雨災害など過去の災害において、災害の直後から現れたリーガル・ニーズ(被災者の生活再建における課題やニーズ)を参考にまとめたものです。今回の熊本地震でも、被災者・被災企業・支援行政・支援機関・メディアの皆様等に届けておきたい特に重要と思われる支援情報は共通するところが多いと思われます。本サイトでは多くの方の助言を得ながらまとめているものですので、この場を借りて御礼を申し上げます。日々刻々と情報は変化します。あくまで本サイトは、今後の情報収集のきっかけとして参考にしていただきたいと思います(最終更新2016.07.05)。

 

■「災害復興法学」の一部公開(第二部第10章「絶望を希望に変える情報を伝えるために官民連携による情報提供ルートの複線化」

「災害復興法学」は、東日本大震災後に弁護士が実施した無料法律相談4万件のデータ分析、法改正などの政策実現の軌跡、将来の危機管理・防災教育への提言、などを記した書籍です。そのなかのひとつの章では、被災者の再建に必要な法制度の情報を、必要な方へどうやって届けるべきかをテーマにしています。官民が連携し、支援の在り方について試行錯誤した経験や、当時作成したツールを紹介しています。生活再建情報や有益情報の周知方法のヒントとして、皆さまのお役に立つことを願っております。

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参考文献

「公民連携による情報提供と新しい危機管理デザイン―行政、民間団体、専門家の連携による災害時の情報提供ルート複線化(岡本正)」(論文・東洋大学PPP研究センター)

■行政・企業・NPO・専門家連携による情報提供支援の新しいかたち 3万件超の東日本大震災無料法律相談から見えた課題(下)(寄稿・リスク対策.com)

「自治体の個人情報保護と共有の実務 地域における災害対策・避難支援」(ぎょうせい)

「自然災害と被災者支援」(日本評論社)

「災害復興法学」(慶應義塾大学出版会)

 

法律家による過去の支援ツールや防災の取り組みなど

■岩手弁護士会NEWS

東日本大震災無料法律相談情報分析結果(第5次分析)4万件超のデータ分析結果

■静岡県弁護士会ニュース

■広島弁護士会ニュース

■広島弁護士会が1年間で実施した無料法律相談の分析結果(Yahoo!ニュース)