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【災害復興法学のすすめ】(1)災害時における法律家・専門家の役割とは

弁護士の仕事といえば、裁判、というのが定番のイメージではないだろうか。

ところが、今や弁護士の活動のフィールドは多種多様になってきた。

企業内弁護士、国や自治体の行政内弁護士、国際機関や研究機関のマネジメントをする弁護士、仲裁・ADR機関に入る弁護士、もっぱら教育に関与する弁護士、起業家や政治家になっている弁護士。

同じ司法試験を合格し、同じ内容の司法修習を受けているにもかからわず、その先の職種は実に幅広い。

法律事務所に所属する弁護士が多数だとしても、それ以外の途を進む弁護士の数は、私が弁護士になった11年前から比べれば圧倒的に増えた印象だ。

 

 

2011年3月11日のあの日、ほとんどの弁護士たちは自問自答したはずだ。海外の大手ローファームの弁護士も、一般民事を多く扱う事務所の弁護士も、企業内弁護士も、行政内弁護士も。

 

 

 

自分にできる事はないか。

 

 

 

『災害復興法学』の物語は、災害「直後」に法律家が果たすべき役割について紹介するところから始まる。津波被災地の岩手県宮古市で、震災直後から活動をはじめた、一人の弁護士の話から。

 

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私は震災当時、内閣府の職員を拝命し、国家公務員として行政改革や規制改革のとりまとめをしていた。当然その仕事が最優先であったし、自分自身を大きく成長させてもらえるミッションだった。ただ、法律家として直接東日本大震災の支援や復興に関われないかと、日々葛藤の中にいた。思いきって、先の宮古市の弁護士に電話をした。彼と会話をして数分のうちに、自分のやるべきことの輪郭が見えた。電話が終わるころにはやるべきことを見出した。生意気にも、その役目は、政府における政策立案等の経験のある自分こそ、やらなければならないのではないかと感じた。

 

 

 

 

弁護士に相談してくれた被災者の、すべての声のデータベース化

 

 

 

弁護士が法テラスなどと連携して被災地で実施した無料法律相談の相談記録は、4月上旬の時点で、途方もないほど膨大な量になっていた。しかし、すべてが相談後そのままになっており、手つかずだった。これを眠らせては法律家として失格だ。

 

 

今考えれば何とも無茶だが、日弁連には自分を登用するよう求め、内閣府には兼任許可を求めた。

 

 

内閣府の上席政策調査員を続けながら、日弁連災害対策本部の室長に任命された。ところが、データベースを活用にするには統計の専門的な知識が不可欠だ。当時の私にはデータベース構築も統計処理の技術も乏しい。迂闊にミスリードした発表をしてしまえば、その不利益を被るのは、だれでもない、被災された方たち自身だ。室長に就任した途端に壁にぶつかってしまったのだ。

 

ちょうどそのころ、全く別のルートで、震災とは関係のない動機から、ある研究者が日弁連の研究員として採用されていた。

 

 

その研究者の専門分野と技術を聞いて私も驚いた。

これは運命としか言い様がなかった。

(つづく…かも。本コラムは、『災害復興法学』(慶應義塾大学出版会)では描ききれなかったエピソードを著者の視点から綴るものです。反響があれば続きのコラムがあるかもしれません。)

 

災害復興法学書影

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