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【インタビュー】(日経クロステック/日経コンピュータ)「平時から情報共有などの体制整備を」石川県副知事ら4人が語る防災DXに向けた提言」

日経クロステック・日経コンピュータ 2024年2月21日

特集「能登半島地震、防災DXの理想と現実第4回「平時から情報共有などの体制整備を」石川県副知事ら4人が語る防災DXに向けた提言」にインタビューが掲載されました。 >

能登半島地震では被災者の救助や支援のため、石川県が中心となり官民が連携して避難所や避難者、被災者の把握に向けたデータ収集やシステム構築などデジタル活用が進んだ。発災から1カ月半、石川県CDO(最高デジタル責任者)を務める西垣淳子副知事をはじめ、対応に当たった当事者や、災害と個人情報に詳しい専門家に、今回の対応を経て得た教訓や今後の防災デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた提言を聞いた。

石川県の西垣淳子副知事、神奈川県CIOの江口清貴氏、防災技術科学研究所の臼田裕一郎先生らとともに、岡本正のインタビューが掲載されました。岡本のインタビュー部分は以下の通りです。

 

 

 

被災者支援には行政機関の個人情報有効活用が必要

銀座パートナーズ法律事務所弁護士 岡本正 氏

岡本正(おかもと・ただし)氏

銀座パートナーズ法律事務所弁護士、博士(法学)、気象予報士、防災士、防災介助士。

2001年慶応義塾大学法学部卒、2003年弁護士登録、2016年より現職

復興政策を確実なものとするためには既存制度の改善が不可欠だと考え、東日本大震災をきっかけに新しい学問「災害復興法学」を創設した。災害と個人情報に関する法政策は特に重要なテーマの1つだ。これまで緊急時の個人情報については、安否不明者の情報開示などを働きかけてきた。今回の能登半島地震でも、石川県は犠牲者や安否不明者の氏名を公開している。

一方、制度はあるが、災害発生直後の緊急時・応急時に使いこなせていないのが、避難行動要支援者名簿だ。災害発生時の高齢者や障害者など災害弱者の支援のため、2013年の災害対策基本法改正で全市町村に作成が義務付けられた。ただ、実際に災害時にこの名簿を効果的に活用したという事例はごくわずか。被災者の命を守るためにも、こうした名簿を被災者の救援・救護や見守りに活用すべきだ。

 生活再建・復興支援の段階では、行政機関が被災者の個人情報を有効に活用することで、被災者の支援がスムーズになる。被災者は行政の支援を受けるためには、申請による手続きが必要となる。特に福祉支援は喫緊の課題だが、高齢者や障害者にとって自ら制度を見つけて申請するのは難しい。

そこで政府は2023年5月、被災者に寄り添い生活全体の状況を把握し、それぞれの課題に応じて情報提供や人的支援などを行う「災害ケースマネジメント」の推進を、災害対策基本法に基づき作成される防災基本計画に明記した。そのためには、行政機関は個人の状態や受けているサービスの情報などを把握する必要がある。

 ところが、今回のように災害の範囲が広範囲に及び、被災者が広域避難などで移動すれば、市町村は個人を把握して支援しきれなくなる。被災者がもともと居住する市町村は、移動先の市町村や都道府県などともその個人の情報を共有する必要がある。

今回、石川県は被害の大きかった6市町の全住民約12万人の被災者データベースを構築して、市町の被災者支援に生かすとしている。データベースを活用して、被災者の個人情報を行政機関間で共有することで、専門職による見守りやボランティア活動などによる被災者を支援するアウトリーチ(働きかけ)をしっかりできるか否かは、今後の災害ケースマネジメントの深化を占う試金石になる。