活動実績

【学会】(避難所・避難生活学会/日本災害医学会)「災害救助法に関する柔軟運用と災害復興法学教育による人材育成」

第29回 日本災害医学会総会・学術集会(2024年2月22日~2月24日)『叡智の結集 全ては被災者のために』

避難所・避難生活学会(2024年2月24日)

会場 京都市勧業館みやこめっせ

避難所・避難生活学会 ■パネルディスカッション 40■
3 日目(2 月 24 日)14:50 ~ 15:50
第 10 会場(みやこめっせ B1 階 大会議室)

避難所・避難生活学会5 命を救い・繋ぐ法整備~避難生活と災害復興法学のすすめ

座長 鵜飼 卓(谷向病院 健診センター長 兵庫県災害医療センター 顧問)
岡本 正(銀座パートナーズ法律事務所代表弁護士・岩手大学地域防災研究センター客員教授・人と防災未来センター特別研究調査員)

PD40-1 災害救助法に関する柔軟運用と災害復興法学教育による人材育成
銀座パートナーズ法律事務所/岩手大学地域防災研究センター 岡本 正

PD40-2 危機時代の避難所・避難生活支援に資する看護・ケア人材の育成
神戸市看護大学 災害看護・国際看護学 神原 咲子

PD40-3 災害救助法適用の課題と被災者支援報道
静岡新聞社社会部/人と防災未来センター特別研究調査員 武田 愛一郎

 

(抄録)

パネルディスカッション 40 PD40-1
災害救助法に関する柔軟運用と災害復興法学教育による人材育成
Human resource development through flexible application of Disaster Relief Act and disaster
reconstruction legal education

岡本 正
銀座パートナーズ法律事務所/岩手大学地域防災研究センター

トイレ、食事、寝床等の避難所・避難生活の環境整備「避難所 TKB」の実現のためには、事前
協定、備蓄、専門家人材の登録と確保、災害後の実際の調達活動、正しい運用実務の実践が不
可欠である。そのためには、(1) 予算根拠となる法制度、ことに災害救助法の一般基準の底上げ
を含む抜本的な法改正、(2) あらゆる専門職が災害救助法を熟知し徹底活用できるための法的思
考力を有した人材の育成、の双方を充実化させることが急務である。災害後の支援は、急性期
の医療支援や直接的な救援救護活動等に止まらない。被災後の避難所環境の整備や、在宅被災
者への適切なアプローチ活動を貫徹してこそ、被災者の健康を維持し災害関連死を防ぐことが
できる。「健康」とは肉体的・精神的健康のみならず「社会的健康」(Social Well-being)の達成
も含まれる。これらを医療関係者、看護福祉関係者を含む専門職のほか、災害復興支援に関わ
るすべての関係者に対する国民的教養として「災害復興法学」を取り込んだ教育活動の展開が
求められる。近年、新しい災害看護教育や医学部教育での人材育成や、マスメディアの被災者
支援報道などにその萌芽をみることができる。

パネルディスカッション 40 PD40-2
危機時代の避難所・避難生活支援に資する看護・ケア人材の育成
Human Capacity Development of Nursing and Care in Sheltering in Polycrisis

神原 咲子
神戸市看護大学 災害看護・国際看護学

災害による健康被害と避難生活は、その規模だけでなく季節、土地柄によって多様である。地
域では、グローバルな動向と未来の状況を見極めて、個人の人間の安全保障を守りながらフレ
キシブルな対応が求められる。災害、特に水害による健康危機の状況では、医療の需要供給バ
ランスの崩れや支援が不足する中、少子高齢化した避難生活集団での衛生的な飲料水、食料と
栄養、安心できる衛生的なトイレや適切な居住環境、廃棄物処理などにより人々の健康をセル
フケアすることで健康が守られ、感染症が予防される対策への人的・物的資源が必要である。
人々がどのように健康行動の意思決定をとれるか、という点で、個々が①人々が自身の「生活
ニーズ」とリスクに関心をもち、見える化しながら意思決定をし、“ 公正に” 環境を整える
「セルフケア」ができることと同時に②コミュニティや地域の人びとが参画できるための、保
健医療政策と自助共助を中心とした対策が一気通貫となるための人材育成について、災害看護
の観点から専門職、地域人材の取り組み例と今後への提案を述べたい。

パネルディスカッション 40 PD40-3
災害救助法適用の課題と被災者支援報道
Issues in applying the Disaster Relief Act and reporting on support for disaster victims

武田 愛一郎
静岡新聞社社会部/人と防災未来センター特別研究調査員

災害時でも尊厳ある避難生活を送り、関連死を防ぐには災害救助法の適用が極めて重要になる
が、適用を巡っては課題が多い。救助法の適用基準のうち、災害発生の恐れがある段階で適用
できる、いわゆる4号適用は、基礎自治体が避難所の開設や運営、被災者支援に関して迅速な
初動態勢を取ることができ、被災者の救済や被害拡大の防止に資するため意義が大きい。だが、
昨年6月の台風2号の際、静岡県では、県に適用を求めた5市のうち1市は適用を受けた一方、
残る4市は認められない事象が起きた。うち1市は死者1人、全壊5棟の被害が出た。別の自
治体は広範囲の床上浸水が発生し救助要請も複数あったが、適用を申請しなかった。混乱の一
因として、自治体職員にとって救助法の適用は不慣れなことや、救助法の意義を十分理解して
いないことなどが挙げられる。2022年9月の台風15号では、静岡県内で救助法が適用
になったものの、避難所が早々と閉鎖されたため、被災者が行き場を失い親せき宅を転々とし
たケースもあった。適用を判断する最前線ではスムーズな運用や法の効果を最大限生かすこと
がままならない現状があり、法適用に関する研修や訓練が不可欠となっている。